(封入カラーシート対訳)
君が誰であっても、どこにいても、俺達は似た者同士なんじゃないか、と思い始めている。人間というのは、ともすれば自分勝手になる。みんな見られたいし、触れられたいし、注目を集めたい。僕にとっては愛する人々がすべて。この3年間、俺は神様に向かって叫び続けていた。空の彼方に向かって、説明を求めて叫んでいたんだ。救済、といってもいい。心の平和を取り戻す雨に降り注いで欲しかった。
4年前の夏、俺達は出会った。俺は19歳で、彼も同じ年だった。その夏を一緒に過ごし、翌年の夏も一緒だった。ほとんど毎日一緒で、その間は時間がこぼれるように過ぎて行った。会いに行くと、彼は微笑んだ。眠る時間になるまで、彼の言葉を聞き、沈黙にも耳を傾けた。一緒に寝ることも多かった。彼を愛していることに気づいた時は、もう悪性の腫瘍みたいになっていた。絶望的で、逃げ場がなく、感情を収める術もなかった。選択の余地も。俺にとって初恋で、人生そのものを変えてしまった。その頃はよく、それまでにつき合って、思いを寄せ、愛していると思い込んでいた女性達のことをあれこれ考えていた。10代の頃によく聴いていたセンチメンタルな曲を懐かしんだ。初めて彼女が出来た時によくかけていた曲を。
でも、それらの曲は俺が使うのとは違う言葉で書かれていたことに気づいてしまった。あまりにも早く、多くを悟ってしまった。飛行機から放り出されたみたいな感じ。俺が乗っていたのは飛行機ではなくて、日本製の乗用車だったんだけど。荷物を詰め込んで、ロサンゼルスまで移動した車にまだ乗っていたんだ。車の中に座って、自分の思いを彼に告白した。口から言葉がこぼれ落ち、俺は嗚咽した。その言葉をもう取り返せないことを、嘆きながら。彼は俺の背中をさすって、優しい言葉をかけてくれた。精一杯してくれたけれど、同じ想いだとは認めなかった。彼は家の中にすぐ戻らなくてはいけなかった。深夜で、彼のガールフレンドが2階で待っていたんだ。それから3年以上、彼は本当の気持ちを俺に話してくれなかった。想像の中でだけ、俺達は両思いだった。今度は崖から突き落とされたような感じ。でも、俺は崖っぷちに立ってはおらず、自分の車に座って、うまく行くさ、深呼吸しろ、と自分に言い聞かせた。息をついて、そのまま進んだ。彼との奇妙な友情は続いた。彼なしで人生を送るのは無理だったから。自分自身と自分の感情を飼いならすのは大変で、なかなかうまく行かなかった。
奇妙なダンスは続いた。その後も、同じリズムでいくつかの夏を過ごした。今は冬だ。ニューオーリンズからロサンゼルスに戻る機内でこれを書いている。故郷に戻って、また傷心のクリスマスを過ごした。窓際の席に座っている。2011年の12月27日。これまでに2枚の作品を書いた。これは2枚目なんだよ。自分を忙しく、正気に保つために書いたんだ。自分自身がいる世界より、バラ色の世界を描きたかった。押しつぶされそうなほどの感情を、作品に注いだ。おかげですごく遠くまで来られたことに、驚いている。これを書く前、何人かの人に話を聞いてもらった。最初のうちは泣きながら話した。それから楽になった。耳を傾けてくれた人のおかげで俺は生きているし、本気で守ってもらったと思っている。その人達に、心の底からお礼を言いたい。誰かはもう分かっているよね。すばらしい人達、天使かもしれないな。これから何が起きるかわからないけれど、それでいいんだ。もう黙っていないといけない秘密はない。少しはあるかも知れないけれど、言いたいことはわかるよね。ひとりぼっちだったことはない。そう感じたことはあるし、今でも時々そう感じるけれど、違うんだ。一生、ひとりになることはないと思う。ありがとう。俺の初恋の人。感謝するよ。願ったようにはならなかったし、満ち足りたこともないけれど、ありがとう。俺達は、うまくいかない運命だったんだ。君のことは忘れない。あの夏を忘れない。君に会った時の自分を忘れない。君がどんな人だったか、二人がどう変わって、でもそのままでいたことを忘れない。今以上に、人生と生きることに対して敬虔な気持ちになったことはないよ。死にかけてやっと、生きた心地がするんだろうね。ありがとう、母さん。俺を強く育ててくれて。あなたが勇敢でいてくれたから、俺も同じでいられる。だから、ありがとう。みんなにも。すばらしいものすべてへ。自由の身になった気分だ。耳を澄ませると、空が落ちていくのが聞こえるんだ。
フランク
対訳:池城美菜子/Minako Ikeshiro